fur-furの日記

抗菌化学療法認定薬剤師が日々の勉強したことを共有します。

グラム陽性球菌感染症

グラム陽性球菌

 

ブドウ球菌属は黄色ブドウ球菌とコアグラーゼ陰性ブドウ球菌属に分けられる。

今日はStaphylococcus aureus黄色ブドウ球菌)についてまとめる。

 

 【Staphylococcus aureus

〇常在する臓器

皮膚や鼻腔内

 

感染症

外傷や手術、血管内留置カテーテルなどで皮膚の解剖学的バリアの破壊による皮下膿瘍などの皮膚軟部組織感染症を来す。されに病変が進展すると菌血症、関節炎、骨髄炎を来す。菌血症の合併症で腸腰筋膿瘍硬膜外膿瘍などの体の至るところに膿瘍を形成したり、感染性心内膜兼や椎体炎など転移性・破壊性の遠隔感染巣を形成する。

 

〇毒素

TSST-1::トキシックショック症候群

エンテロトキシン:食中毒

Exfoliative toxinA/B:ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群

 

 

メチシリン感受性黄色ブドウ球菌MSSA)とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA)に分けられる。

 

〇治療薬

MSSA感染症

第一選択はCEZ ただし髄膜炎合併している場合は不可(CEZ髄液移行不良

 

MRSA感染症

MRSA薬 (VCM、TEIC、LZD、DAP、ABK

その他感受性があればST合剤、マクロライド系、クリンダマイシン、テトラサイクリン系、キノロン系など。

イオフイルム関与する感染症ではRFPの併用を考慮する。

 

【コアグラーゼ陰性黄色ブドウ球菌

〇常在する臓器

皮膚や鼻腔に存在

 

感染症

皮膚軟部感染症、菌血症を来すが病原性は弱く、転移性・破壊性の遠隔感染巣を形成する頻度は少ない。ただし、Staphylococcus lugdunensisは比較的病原性が高く感染性心内膜炎の原因となる。

 

〇耐性菌

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の80%がメチシリン耐性を示す。

 

〇治療薬

黄色ブドウ球菌感染症同様

 

【β溶血性レンサ球菌】

〇常在する臓器

S. pyogenes:咽頭

S. agalactiae:腸管

 

感染症

S. pyogenes:小児の細菌性扁桃炎や壊死性筋膜炎

S.agalactiae:妊婦の保菌を原因とする髄膜炎

 

〇治療薬

PCG、ABPC

 

Streptocossus pnemoniae(肺炎球菌)】

α溶血を呈するレンサ状のグラム陽性球菌

菌体周囲に莢膜を有しグラム染色で菌体周囲が抜けて見える

 

〇常在する臓器

鼻腔や咽頭

 

感染症

呼吸器感染症で最も頻度の高い細菌

髄膜炎

〇耐性菌

PCG、CTX、CFPMに対して髄膜炎かそれ以外の感染症でブレイクポイントが異なる。

耐性機序:ペニシリン結合タンパクの変異でペニシリナーゼ産生菌は存在しない。

 

〇治療薬

第一選択:PCG、ABPC

ペニシリン耐性肺炎球菌感染症:CTX、CTRX

 

Enterococci(腸球菌属)】

腸球菌属には分離度の高いEnterococcus faecalis、院内感染で多いEnterococcus faecium、Enterococcus casseliflavusEnterococcus gallinarumなど

 

〇常在する臓器

腸管

感染症

尿路感染症、胆管炎、腹膜炎、腹腔内感染症

病原性は比較的弱い。

 

〇耐性菌

腸球菌はセファロスポリン系約全般に自然耐性を示す。

バンコマイシン耐性腸球菌

腸球菌属はまれにペニシリナーゼを産生する。

 

〇治療薬

ペニシリン感性菌であればABPCが第一選択

E. faecium:VCM

これらの抗菌薬は腸球菌属に対して静菌的に働く。感染性心内膜炎などでは相乗効果を期待してアミノグリコシド系薬を併用する。

VRE:DAP、LZD(感受性を確認して使用)

 

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