fur-furの日記

抗菌化学療法認定薬剤師が日々の勉強したことを共有します。

β遮断薬を極める

心不全の治療薬

β遮断薬

〇作用機序

アドレナリンβ1受容体を遮断することで交感神経系による心収縮の増強や心拍数の増加を抑制する。特に左室駆出率(LVEF)の低下した心不全(HFEF)の予後を改善する。

 

エビデンス

ビソプロロール、コハク酸メトプロロールは、カルベジロールの3剤はHFrEFの生命予後を改善し、死亡や入院リスクを減少させることが示された。

日本ではビソプロロールとカルベジロールの2剤が推奨されている。

メトプロロールは日本では酒石酸塩が使用可能であるが短時間作用で心不全の適応はない。

 

〇β遮断薬の適応

LFEFの低下した心不全(HFEF)

原則としてHFrEFと診断された患者に早期から開始する。

 

LVFXが軽度低下した心不全(HFmrEF)

LVEF40~49%ではエビデンスに乏しい

 

LVEFが保たれた心不全(HFpEF)

LVEF≧50%ではβ遮断薬の予後改善効果なし

 

〇β遮断薬の使い分け

アドレナリン受容体にはα₁・α₂・β₁・β₂・β₃受容体がある。

β₁受容体は結合するとGタンパクによってアデニル酸シクラーゼを活性化してサイクリックAMP(cAMP)を合成しcAMPがプロテインキナーゼAを活性化することで細胞膜からCa²⁺の取り込みや筋小胞体からのCa²⁺の放出を増やし心筋の収縮を強め心拍数を増加させる。α₁受容体は血管収縮になどに、β₂受容体は気管支や血管平滑筋の弛緩に関与する。

 

カルベジロールとビソプロロールの比較で有効性、安全性の差はない。

違いはβ₁への選択性

 

カルベジロール:α₁、β₁受容体遮断薬

気管支攣縮をきたしやすい。

慢性閉塞性肺疾患などある場合はビソプロロールを選択する。

 

ビソプロロール:β₁受容体選択性

徐脈下しやすい。

徐脈傾向の場合は軽くてを選択する。

 

カルベジロール20㎎/日=ビソプロロール5㎎/日

 

〇β遮断薬の使い方

血行動態が安定しておりうっ血がない状態で少量から始め漸増し忍容性のある最大投与量を目指す。

陰性変力作用のあるβ遮断薬の導入や増量はうっ血を増悪させ心不全を悪化させる可能性がある。

 

・導入・増量方法

カルベジロール

用法:1日2回

通常1回1.25㎎、2.5㎎/日から開始

重症例は1回0.625㎎、1.25㎎/日から開始

以後3.75㎎/日または5㎎/日⇒7.5㎎/日⇒10㎎/日⇒15㎎/日⇒20㎎/日と数日から2週間ごとい増量する。

 

ビソプロロール

用法:1日1回

通常0.625㎎/日から開始

重症例は0.3125㎎/日から開始

以後1.25㎎/日⇒2.5㎎/日⇒3.75㎎/日⇒5㎎/日と増量する。

 

カルベジロールは増量幅も小さく調整したりでき特に超重症例では使いやすい。

 

・導入・増量時の注意点

β遮断薬の導入や増量時には一時的にうっ血が増悪して利尿薬などの調整が必要になることもある。

息切れや浮腫、血圧や脈拍、BNP値の推移などに注意する。

 

・目標用量

少量であっても予後が改善することが示されている。

HFrEFにはまず導入することが重要になる。

ただし、効果にはある程度の用量反応性があり、忍容性があれば増量が望ましい。

 

・減量・中止

心機能が改善されても継続することが推奨される。

β遮断薬の投与中はβ受容体がup-regulationされており突然の中止で交感神経系が過剰に亢進した状態になって予後が悪化すると考えられている。

 

〇α刺激作用

β遮断作用により相対的にα受容体が優位になり血管収縮が誘発される。

冠攣縮狭心症が増悪するリスクがあるため単独では禁忌とされカルシウム拮抗薬などと併用する。

褐色細胞腫には単独使用が禁忌でありα遮断薬と併用する。

 

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